運動なしでも痩せる? NEATを活用したダイエット戦略

ダイエット

ダイエットというと、真っ先に思い浮かべるのはジムでのトレーニングやランニングなどの運動かもしれません。しかし、日々の体重管理においては、こうした「運動」よりも、日常生活の中にある小さな動きが大きな影響を与えることが、近年の研究で明らかになってきました。そのキーワードとなるのが「NEAT(非運動性活動熱産生)」です。

NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)とは、運動として意識的に行うもの以外の活動によって消費されるエネルギーのことを指します。たとえば、通勤時に歩く、掃除をする、子どもと遊ぶ、料理をする、階段を使う、買い物に行くといった日常の動作すべてがNEATに該当します。Levineら(2005)の研究では、NEATの個人差が1日あたり最大で約2000kcalものエネルギー消費量の違いを生む可能性があると報告されています。つまり、運動をしていなくても、普段の生活の中でよく動く人ほど、自然とカロリーを多く消費しているのです。

NEATを増やすためには、特別なトレーニングや器具は必要ありません。まず効果的なのが「立つ時間を増やす」ことです。Katzmarzykら(2009)の研究によると、長時間座って過ごす生活は、肥満や糖尿病、心疾患のリスクを高めることがわかっています。オフィスワークの人はスタンディングデスクを導入したり、1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチをすることで、代謝を維持しやすくなります。

また、「歩数を増やす」こともNEATの向上につながります。Tudor-Lockeら(2011)は、1日1万歩を目標にすることで、心血管疾患や肥満の予防に有効であると報告しています。通勤時に一駅分歩く、エレベーターの代わりに階段を使う、近所の買い物には車を使わず歩くなど、小さな工夫が積み重なって大きな成果につながります。

さらに見落とされがちですが、「家事」も非常に効果的なNEATです。掃除機がけ、床拭き、洗濯物を干す、料理をするなど、日々の家庭内作業も継続的に行えば立派なカロリー消費源になります。たとえば掃除機を30分かけるだけで約100〜150kcal、床掃除や風呂掃除などはさらに多くのエネルギーを使います。育児やペットの世話なども、体を自然に動かす良い機会といえるでしょう。

NEATの利点は、身体的・精神的な負担が少なく、年齢や体力に関係なく誰でも始められる点にあります。また、日常生活に無理なく取り入れられるため、継続しやすくリバウンドのリスクも低減できます。特に、運動が苦手な人や忙しくて運動の時間を確保できない人にとっては、NEATを意識することがダイエット成功のカギになるでしょう。

まとめると、NEATは「運動しない人でも消費エネルギーを増やせる」最も現実的な方法のひとつです。ジムに通わなくても、意識次第で毎日の活動量は大きく変わります。エレベーターより階段、タクシーより徒歩、座っている時間より立っている時間を増やすことで、自然にエネルギーを使い、太りにくい体質をつくることができます。ダイエットの第一歩は、「ちょっと動くこと」から始まります。

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